パッションフルーツ

分類 トケイソウ科 トケイソウ属 常緑つる性木質多年草
原産地 ブラジル南部、パラグアイ
耐寒温度 3℃
生育適温 20~30℃

パッションフルーツ(Passion fruit)は、ブラジル原産の亜熱帯地域で栽培されている果樹です。ブラジルでは「マクラジャ」と呼ばれています。時計の文字盤に似た花が咲くことから、別名、果物時計草(クダモノトケイソウ)とも呼ばれます。果実は甘酸っぱく強烈な南国の風味があります。ビタミンA、B、C、βカロテン、クエン酸、カリウムなどが豊富に含まれており、老化防止、生活習慣病予防や疲労回復などにも効果があるそうです。近年では、花や葉に含まれる天然成分ハルミンに、歯周病治療に役立つことが発見されたそうです。栽培は、成長が旺盛で病害虫の心配もほとんどなく簡単に育てることができます。つる性なので自由な形で育てることができ、葉っぱは、夏の暑いときでも萎れず、秋ごろまで枯れずに綺麗な状態を保つことができます。この特性がグリーンカーテンの定番「ゴーヤ」「朝顔」などより優秀な為、注目され始めています。エコ、節電対策の傍ら、花も実も楽しめる緑のカーテンは利用価値が高いでしょう。結実年数は、春に小苗から育てても年内に、実生(みしょう)でも翌年~3年後には収穫できます。

パッションフルーツ

品種・種類

品種は凄くたくさんあるので、いくつか代表的なものを紹介します。

パッシフロラ・エドゥリス
パッションフルーツ(エドゥリス)
パッシフロラ・アラタ
アラタ
パッシフロラ・デカイスネアナ
デカイスネアナ
オオミノトケイソウ
オオミノトケイソウ
ミズレモン
ミズレモン
バナナパッション
バナナパッション
善翁桜
善翁桜
パッシフロラ・エドゥリス (passiflora edulis)
別名 クダモノトケイソウ
日本でパッションフルーツといえば通常この品種を指す。最も育てやすく味もよいので食用に向いている。果皮が紫色と黄色の2種類ある。黄色系をイエローパッションフルーツ、キイロトケイと呼ぶこともある。紫色系は、自家受粉性で1本で実がなる。黄色系は、紫色系より耐寒性が弱く、自家結実しにくい。蜜線は1つの葉に2つ。成木の葉は三裂している。edulisの語源はラテン語で「食用」という意味。自家結実しにくい他品種の受粉樹としても利用できる。
パッシフロラ・アラタ (passiflora alata)
別名 ブラジルトケイソウ、スウィートパッション、ゴールデンリリコイ
黄色い果皮で、酸味がほとんどなく甘い。内側の白い果皮の部分も可食できる。他の品種があったほうが結実しやすい。蜜線が黄色で1つの葉に2~4つ。葉の形は三裂していなく普通の卵型。茎は四角い(4稜形)。葉の付け根に翼状の小さい葉がある。alataの語源はラテン語で「翼」という意味。リリコイとはハワイ語でパッションフルーツという意味、アラタは黄色い実がなるので「ゴールデンリリコイ(Golden Lilikoi)」とも呼ばれる。
パッシフロラ・フォエニケア (passiflora phoenicea)
別名 alata 'Ruby Glow' (アラタ・ルビーグロー)
パッシフロラ・アラタの園芸品種。アラタより大きい果実がなる。実の大きさはグレープフルーツくらい。蜜線がオレンジ色で1つの葉に2つ。
パッシフロラ・クアドラングラリス (passiflora quadrangularis)
別名 オオミノトケイソウ(大実の時計草)、オオナガミクダモノトケイソウ(大長実果物時計草)、ジャイアントグラナディラ
パッションフルーツの中では最大級。果皮は黄緑色、果実の大きさ20~30cm、重さ最大2キロにもなる。自家結実性はあるが他の品種があったほうが結実しやすい。蜜線は1つの葉に最大6つ。葉の形は三裂していなく普通の卵型。茎は四角い(4稜形)。葉の付け根に翼状の小さい葉がある。quadrangularisの語源はラテン語で「4稜形(よんりょうけい)」という意味。突然変異で果実の形に特徴のある「エロティカ(Erotica)」という品種もある。
パッシフロラ・デカイスネアナ (passiflora × decaisneana)
別名 ブルーヘブン
フランスの植物学者 Joseph Decaisne が作った交雑種。alata と quadrangularis の掛け合わせ。果皮は黄色、果実の大きさ16~18cm。蜜線が1つの葉に4つ。花は直径10~12cmと大きく豪華。両方のいいとこどりした品種。耐寒温度7℃。
パッシフロラ・ラウリフォリア (passiflora laurifolia)
別名 ミズレモン、ウォーターレモン、タマゴトケイ、キミノトケイソウ
パッションフルーツの中でも特においしいと言われている。果皮は黄色~オレンジ色。自家結実性がないので、クローンではない株を2つ用意するか、他の品種が必要。蜜線は1つの葉に2つ。
パッシフロラ・リグラリス (passiflora liguralis)
別名 スイートグラナディラ、アマミクダモノトケイソウ、パッションフルーツオレンジ
普通のパッションフルーツと味が随分違うと言われている。果皮はオレンジ色で大きさ7~8cm。酸味が控えめで甘い。洋ナシに近い香り。高温多湿に弱い。自家受粉できないので他の品種が必要。蜜線がひげ状で1つの葉に2つ。夏の高温は弱いが、冬は0℃くらいまで耐えれる。
パッシフロラ・モリッシマ (passiflora mollissima)
別名 バナナパッションフルーツ
果実の形がバナナに似ている。果実は、縦長で大きさ12cmほどで果皮は黄色。酸味が少なくすっきりした甘味。自家受粉できる。耐寒性は強いが、高温多湿を嫌うので夏場に枯れやすい。
善翁桜 (ぜんおうざくら)
新潟県の堀越氏が「オオミノトケイソウ」と「アラタ」を掛け合わせて作った新品種。和製デカイスネアナ。2011年より一般流通開始。果実は、細長く超大実、果長約18cm、果径約11cm。食べ応えがあり美味。自家結実しないため、他品種が必要。受粉樹には、アラタが最適。

様々なパッションフルーツ パッションフルーツ・アラタの果肉

パッションフルーツ・アラタの花と蕾
小さなポット苗の状態でも開花するド派手なパッションフルーツ・アラタ。花芽がつき易く丈夫。結実となると難しく、稀に自家結実することもあるが種無しになることが多い。

パッションフルーツ・ミズレモンの花
ミズレモンの花。ミズレモンは自家結実性がないのでタイプの異なる受粉樹が必要。

パッションフルーツ ミズレモン [日本花キ流通]

特徴

※以下、一般的な品種 passiflora edulis (パッシフロラ・エドゥリス)を前提とした説明になります。

パッションフルーツの木

パッションフルーツの新芽
パッションフルーツの巻き髭

蔓性(つるせい)の多年草で、若い蔓はやわらかく、古くなると木質化して硬くなります。葉は、大きさ10~20cm程度で光沢があります。幼木の頃は普通の卵型ですが、成木になると深く三裂します。葉の付け部分の葉腋(ようえき)から巻き髭を出しよじ登ります。花芽も葉腋から発生して蕾へと成長します。葉柄(ようへい)や蕾には、甘い蜜を出して昆虫を誘き寄せる為の蜜腺があります。花は、大きさ6~8cmほどで午前中に開花して夜には萎みます。一度咲くとその花は終わり、同じ花が何度も咲くことはありません。開花時期は6月頃と9月頃です。株の寿命は約8年程度で、挿し木や実生で株を更新します。

パッションフルーツの蜜腺
葉の付け根の蜜腺(みつせん)
パッションフルーツの花芽
花芽の萼(がく)の縁にある蜜腺

パッションフルーツ 蕾の中
蕾の中はこんな感じ!

パッションフルーツの花

受粉すると子房の部分が膨らんできて実になります。果実は球形か楕円形で大きさ6~8cm、重さは70g前後です。果皮は、緑色から熟すと紫色または黄色になります。完熟すると自然落果します。果肉は、黄色で種子を包むゼリー状の仮種皮(かりしゅひ)を食用とします。

パッションフルーツの果肉

タネの蒔き方

タネを包む半透明のゼリー状の仮種皮には発芽制御物質が含まれているので、よく水洗いしてきれいに取り除きます。肥料分のない種まき用培養土などに蒔き、軽く土を被せます。用土は乾かないように管理します。発芽まで、1週間~2ヶ月くらいかかります。少し遅いのであきらめずに待ちましょう。種まきの適期は生育適温期の5~9月くらいが良いでしょう。下の発芽した苗は5月18日に種を蒔いたもので、翌年6月19日に開花しました。

パッションフルーツの種子
種子
パッションフルーツ発芽
発芽
パッションフルーツの幼木の葉
約2ヶ月後

栽培のポイント、冬越し

日当たり、風通しの良い場所で育てます。生育適温は20~30℃です。春~秋は、戸外の日当たりの良い場所に置き、水切れや肥料切れのないように管理します。日当たりが悪いと花芽がつきにくくなるので、できるだけ日のあたる場所に置きます。花芽がつき出したら、直射日光が花芽に当たるように蔓を誘引します。気温が13℃以下や30℃を超えると、生育中の果実が落果したり、蕾が黄色くなり落ちることがあります。

パッションフルーツの蕾
健康な蕾
パッションフルーツの黄色い蕾
生育不良の黄色い蕾

冬は、室内の日当たりの良い場所に置きます。8℃以上あれば葉を保ったまま越冬できます。暖かい地域では、北風や霜を防げる建物の側や東南の壁面に置けば戸外でも大丈夫でしょう。水を控えれば0℃くらいまで大丈夫です。寒さで落葉しても、根が傷んでなければ春には新芽がでてくるので、マルチングや二重鉢にして根を保護します。種から育てると耐寒性に優れた苗ができる場合もあります。

用土と肥料、水やり

水はけの良い肥沃な用土(pH5.8~6.4)を好みます。用土は、果樹用培養土や自分で作る場合は、赤玉土小粒3、鹿沼土中粒2、腐葉土3、バーミキュライト2の配合や、市販の園芸用培養土8、川砂2の配合など。肥料は、生育適温期(4~10月頃)は毎月1回施します。骨粉入り発行済み油粕などの有機質肥料や緩効性化成肥料を規定量与えます。与えすぎると葉や蔓ばかり茂るので注意します。水遣りは、用土が乾いたら鉢底から流れ出るまでたっぷりとやります。夏場は、乾燥しやすいので水切れに注意します。朝夕2回の水遣りが必要かもしれません。冬は乾かし気味に管理します。2~3週間に1回の水遣りで十分でしょう。

パッションフルーツの鉢植え
パッションフルーツの培養土
特別に配合された専用の土も市販されています

仕立て方と剪定、植え替え

地植えの場合は、日当たりの良い場所で水はけの良い土に植え、フェンスや棚に蔓をはわせます。鉢植えの場合は、6~10号鉢くらいの行灯(あんどん)仕立てにします。大きい鉢の場合は、オベリスクトレリスを使うとおしゃれに仕上がります。行灯やオベリスクへ誘引は外側から囲むように蔓を巻きつけて行きます。トレリスへの誘引は、主枝を真っ直ぐに伸ばし、上まで伸びたら先端をカットして芯を止めます。すると側枝が数本でてくるのでそれぞれの枝を横へまっすぐに誘引していきます。できるだけ蔓を横向きに伸ばすと、花芽がつきやすくなります。植え替えは、2年を目安に、根が詰まってきたら鉢増しも兼ねて植え替えてやります。植え付けや植え替えの適期は4~6月上旬です。剪定は、春先に込み合った枝などを間引き剪定します。収穫後や茂りすぎて、剪定する場合は、長い蔓が2つに分かれたところの2節上を切ります。一度実が付いた場所からは花芽がでないので、実が付いた枝は、切り戻してかまいません。

パッションフルーツの鉢植え
お中元にも最適!パッションフルーツの鉢植え

パッションフルーツの緑のカーテン
緑のカーテン!パッションフルーツ 栽培セット
パッションフルーツを利用した緑のカーテン。お手軽に栽培できるパッションフルーツの緑のカーテンキットも市販されています。秋になり、日よけが不要になったら枝を切り戻し冬越しさせれば、翌春に新芽が伸び、再び緑のカーテンを作ることが出来ます。

人工授粉

開花したら人工授粉します。筆などで雄しべの花粉を雌しべの先(3つの柱頭)につけます。雄しべをちぎって直接つけてもかまいません。できれば、遺伝子の違う他の株の花粉を使うと、良質な実になります。高温期に咲いた花や生育不良の花は、花粉がほとんどない場合があります。

パッションフルーツの雄しべと雌しべ
開花
パッションフルーツの受粉作業
おしべの花粉を採る
パッションフルーツ受粉作業2
めしべの先につける

晴れた日の正午前くらいに受粉をすると成功率が高いです。花粉は、特に水に弱いので雨の日は失敗します。

パッションフルーツの蕾の中
受粉翌日 蕾の中の様子
パッションフルーツ受粉成功
受粉成功から数日後
パッションフルーツ受粉失敗
受粉失敗

受粉が成功すると数日で実が膨らんできます。失敗すると蕾全体が黄色くなり自然に落ちます。

増やし方

挿し木

生育適温期に挿し木で増やします。茎を1~2節程度の長さでカットして、葉を半分に切り落とします。1時間程度水を吸わせてから、市販の挿し木用の土や赤玉土などに挿し、明るい日陰で管理します。挿し木中は、土が乾燥しないように注意します。新芽が動き出したら、根が出てきているので、植え替えます。

水挿し

パッションフルーツは非常に強い植物で、剪定したときの枝をある程度の長さで切り、水を入れたコップや花瓶につけて(水挿し)おいても1~2週間で発根します。水挿しで、根が出たのを確認して土に植えても簡単に増やすことができます。

パッションフルーツの水挿し
水挿し

収穫と食べ方

開花後、2ヶ月程度で収穫できます。色が変わり自然に落果したときが食べごろです。追熟で果皮にしわがよると酸味が抜け甘味が増してきます。

パッションフルーツの追熟

半分に切って、タネごとスプーンですくって食べられます。ミックスジュースなどにブレンドするとその果物の味を引き立てます。また、シャーベットにしてもおいしくいただけます。

パッションフルーツの食べ方

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