オリーブ
分類 | モクセイ科 オレア属 常緑小高木 |
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原産地 | 西アジアからアフリカ 地中海地方 |
耐寒温度 | -7℃~-9℃ |
生育適温 | 15℃~20℃ |
オリーブ(olive)は、栽培の歴史が古く紀元前3000年頃から始っています。雨が少なく日照時間が多い温暖な地域が栽培適地で、スペインなど地中海地方の沿岸で広く栽培されています。日本では香川県の小豆島がオリーブの特産地です。果実は、生では渋くて食べることが出来ないため、主にピクルスや塩漬け、オリーブオイルに加工して利用します。また、オリーブの葉を使ったお茶もハーブティーのひとつとして楽しめます。完熟した果肉には、コレステロール値を下げるオレイン酸やビタミンE、ポリフェノールが沢山含まれており、アンチエイジング効果があるとして注目されています。栽培は、寒さや乾燥に強く丈夫で手間も掛からないため人気の果樹です。関東以西では一年中戸外栽培可能です。キラキラ光る銀葉が美しく鑑賞に適しているため、生垣やシンボルツリーなどにも最適です。テラコッタなどの鉢植えにしてもお洒落に仕上がります。結実年数は、苗からで2~3年、実生でおよそ10~20年です。
品種・種類
世界中には数千種類以上の品種があるようです。そのなかで日本国内に導入されたものは約60品種ほどで、家庭用の園芸品種は数10種類ほどです。1本では結実しにくいため自家結実性が強いもの以外は2品種以上を混植するようにします。以下によく流通しているおすすめの品種を紹介します。
- ミッション
- 日本で最も流通している定番品種
- マンザニロ
- 世界各地で栽培されている人気品種
- ミッション(Mission)
- 晩成。樹勢が強くまっすぐ伸びる直立形。葉の裏側は銀白色で美しい。実はハート形で中果。果肉は香り、食感が良く、オイル・塩漬け加工用に最適。少し辛みのあるオイルができる。自家結実性があり1本でも実が付く。日本で最も苗木が普及している定番品種。原産地 アメリカ。
- ルッカ(Lucca)
- 中生。樹の成長は早く主幹は立ち上がり枝は放射状に伸びる開張形。葉は成長につれねじれてくる。実は長卵形で小果。油含有量が豊富でオイル用に最適。フルーツのような香りがする。花粉が多い。自家結実性が多少あり1本でも実が付く。受粉樹があれば収穫量が増える。原産地 イタリア。
- ネバディロブランコ(Nevadillo Blanco)
- 早生。樹の成長が早く直立形~開帳形。葉や枝が多く、樹皮や葉の表は黄緑色で葉の裏は灰緑色。実はやや曲がった卵型、中果。果肉はやわらかく、すっきりとした良い香り。オイル用品種。花粉が多く開花期間が長いため授粉木に向く。原産地 スペイン。
- マンザニロ(Manzanillo)
- 早生。樹はコンパクトに育つ開帳性。葉は小さな銀葉系で枝葉が密になる。実は球形~楕円形で中果。果肉がやわらかく辛みがある。皮は薄く種が小さいため、ピクルス、塩漬けに最適。世界中で栽培されている人気品種。※マンザニロとはスペイン語で「小さなりんご」という意味。原産地 スペイン。
- アザパ(Azapa)
- 晩生。樹はコンパクトに育つ開帳性。葉は大きく縦長。実は卵型、大果。色、香りが良く可食部が多いため、ピクルス、塩漬けに最適。入手困難品種。原産地 チリ。
- アルべキナ(Arbechina)
- 早生。樹はコンパクトに育つ矮性品種。小さな濃い緑色の葉が密につく。実は、小果。リンゴとアーモンドのような甘い香りの小さな実が鈴なりにつく豊産性。オイル用最高級品種。希少品種。自家結実性が多少あり1本でも実が付く。受粉樹があれば収穫量が増える。原産地 スペイン。
特徴
樹の寿命は長くスペインのマジュカル島にある樹齢1000年を超える老木がいまだに果実をならせているそうです。 樹高は品種により様々ですが、成木になると庭植えは10mほど、普通の鉢植えでは1.5~2mくらいになります。
樹齢300年のオリーブの木の鉢植え!!超巨大、規格外の鉢植えオリーブ!!
スペインオリーブ 古木 P 約350cm 原木[KIMIDORI FARM]
葉は、単葉で2枚の葉が向かい合って枝に付いています。まれにハート型をした葉がつくこともあります。表面は濃い緑色、裏面は銀白色をしています。オリーブは常緑樹ですが、葉は1年中落ちない訳ではありません。新しい芽が出て葉がつくと古い葉は落ちていきます。枝葉の芽吹きはとてもよく毎年成長し、前年にのびた枝の先や枝の途中から新しい花芽が4月中旬頃出てきます。
見つけると幸せになるといわれるハート型の葉
花は、直径3mmほどの白い小花が房状につき、1つの花房に10~30輪咲きます。黄色いおしべが目立ちます。5月下旬~6月上旬に開花します。両性花ですが、基本的に自家不和合性が強く1本では実をつけないため、他品種の花粉で受粉してやればよく結実します。自家結実性は品種により異なり1本で結実する品種もあります。開花、結実は樹高が1mを超えるくらいに成長すれば始まります。
果実は、大きさが2cm~4cmほどで、外果皮が成熟するにつれ、緑色→黄緑色→黄緑に赤い斑点→薄紫色→黒色と変化し果肉も柔らかくなります。開花より2~4ヶ月かけ果肉は沢山のを油分を蓄え、1~3g程の実になります。実は渋くて生では食べられない為オイルにしたり塩漬けに加工したりします。種子は堅い殻に覆われており大きさ1cmくらいで実の中心部分に1つ入っています。
タネの蒔き方
十分に完熟した果実から種子を取り出します。果肉を綺麗に取り省いたら殻の先端をハサミなどで2mm程度カットします。可能であれば殻を全部外したほうが発芽しやすくなるようです。種まき用培養土や赤玉土など清潔な土に種と同じ大きさくらいの深さに蒔いて覆土します。発芽するまでは表土を乾かさないように管理します。種まきの適期は3月~4月です。発芽まで早ければ1~2週間、遅くて数ヶ月かかります。殻をカットせずそのまま蒔いた場合は発芽まで1年以上かかることもあるそうです。
栽培のポイント
日当たり風通しがよく日照時間の長い場所を好みます。乾燥に強く、過湿に弱い性質があります。生育適温は気温15~20℃です。耐寒性があるので寒冷地域以外では一年中、戸外で管理します。浅根で強風に弱いため添え木や支柱を立てて固定してやりましょう。開花の頃には、雨で花粉が流されないよう雨除けをすることも大事です。鉢植えの場合は軒下などに移動させてやりましょう。また、冬に10℃以下の低温にあててやらないと花芽分化ができないので栽培場所を選らぶ必要もあります。乾燥には強いのですが、実付きをよくするためには開花、結実期に十分な水分を与えることが大事です。東北地方や北海道地方などの寒冷地域の場合は屋外での冬越しは厳しいため、鉢植えで育てて、冬の10~11月頃に明るい室内に取り込んでやりましょう。春に霜の心配がなくなれば屋外へ出してやります。
寒冷地域は鉢植えで冬場は室内の明るい窓際などで管理
用土と肥料、水やり
水はけ水持ちのよい肥沃なアルカリ性の土(pH7.5~10)を好みます。オリーブ用培養土または自分で配合する場合は、赤玉土6、腐葉土4の用土に有機石灰0.1くらいの割合で混ぜ合わせます。酸性土にしないよう1年に1度は石灰をすきこみ与えます。肥料は、多くは必要ありませんが、切らせることのないよう年3回程度(芽吹き前、開花後、お礼肥え)、窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)が同量の骨粉入り油粕などの有機質肥料を与えます。3月は規定量、6月、10月は規定量の半分あたえます。水遣りは、土の表面が乾いたらたっぷりと与えます。また、冬場は乾かしぎみにしがちですが、水切れを起こしてしまうと実つきが悪くなってしまうので表土が乾いたらちゃんと水遣りをするよう注意しましょう。植え付け直後は、根が安定し活着するのに1~1.5ヶ月位かかるためこの時期しっかりと水をやるようにします。又生育期、開花時期、結実期の頃にもたっぷりの水が必要で水遣りをしっかりします。
オリーブ専用の培養土 アルカリ性に調整され肥料成分などが配合されている土も市販されています。
仕立て方と剪定、植え付け、植え替え
仕立て方は、自然樹形で育てていきます。剪定は、間引きを中心に摘心は控えめにして形を整えていきます。込み合っている内側の小枝や徒長枝は、間引いて、日当たり風通しをよくするようにします。向こう側が透けて見えるくらいにしてやりましょう。毎年新しく伸びてきた枝を切ってしまうと翌年に花芽が付きにくくなるため、伸ばす枝と切る枝を考えながら、枝の枝元から剪定することが大事です。庭植えの場合など樹高が大きくなりすぎた場合は、芽吹き前に太い枝を切戻して2m位の高さに調整してやります。剪定の適期は、2~3月頃くらいで良いですが、すぐに芽吹いてくるので、時期は問わずいつ剪定しても大丈夫です。植え付けは、3月~4月上旬もしくは9月~10月上旬頃がよいでしょう。鉢植えの場合は、ポット苗の2回りくらいの大きさの鉢に植えてやります。庭植えの場合は、日当たり水はけ風通しのよい場所を選び、植え付けの2~3週間前に植え穴を掘りあげた土の約半分くらいの堆肥を混ぜ苦土石灰(マグネシウムとカルシウムで土をアルカリ性にする)を2にぎり位いすきこんでおくと良いでしょう。植え付けのとき、苗の根をかるくほぐして植えつけてやりましょう。植え付けが終わったら、風で苗が倒れないように支柱で固定します。植え替えは、根が詰まってきたら(表土に根が見えてきたら植え替える)1~2年を目安に2まわり大きい鉢に植え替えてやります。ある程度の大きさになり鉢を大きくしたくない場合は同じサイズの鉢に植え替えてやります。根をほぐしながら古い土や枯れている根をできるだけ取り省き、新しい培養土で植え替えてやりましょう。植え替えの適期は、3~4月頃です。
オリーブの木 (5号)シプレッシーノ
人工授粉、摘果
オリーブは1本では結実しにくい自家不和合性が強いため、違う品種の花粉で受粉します。品種によっては単独で結実するのもありますが、多くのものは単独では交配せず他品種の花粉で受粉しないと実をつけることが出来ません。
午前中に花粉が良く出る
自然状態では、風や虫などによって受粉されます。それぞれの株を近くにおいておきましょう。 実つきを良くするためには、人工受粉をしてやります。花粉が良く出る午前中に、耳掻きの先についているぽんぽん(梵天)などを利用して違う品種の株から花粉をとってきてめしべに受粉してやります。この作業をそれぞれ交互にやっていきます。
- オリーブの花 雄しべと雌しべ
- 受粉が成功すると膨らんでくる
実が沢山つきすぎると小果になりやすく又翌年に実がつきにくくなるので、葉が10枚くらいに1果つくくらいを目安にし他の実はつみとる方が良いでしょう。
病害虫
害虫には、オリーブの幹におがくずのような糞を付け、幹に穴をあけて侵入してくるオリーブゾウリムシがいます。みつけたら早急にスミチオンを穴に注入散布しましょう。また根元に近いところの幹にカミキリ虫の幼虫を見つけたら急いで幹に散布をします。駆除しないでいると2~3年くらいで樹は枯れてしまうことになりかねません。病気では、収穫時期に発生する炭素病があります。炭素病は、葉や実の表面に黒い斑点がつきます。これにかかると果実に害をあたえます。早急に殺菌剤(ベンレート、ジマンダイセン)を吹き付けるようにします。
収穫
10月~12月頃に、果皮は色づきはじめます。果皮の色具合を見計らってオイル用にしたり、加工用にしたり時期を選んで収穫するようになります。そのため収穫時期も色々変わってきます。
- 果皮が黄緑色の時期の収穫では新漬けにします。
- 果皮が薄い紫色の時期では緑色のオイルにします。
- 果皮果肉まで黒色に完熟したものは、黄みがかった香りの強いオイルになります。
果実を収穫する時は実に傷をつけないよう注意をします。傷ついた実は時間がたつにつれ品質の低下につながります。すばやく加工や搾油をするようにしましょう。